迷いを消すために頭を剃り上げた男
宮城県、気仙沼市でボランティアを行っているときに、赤いツナギを着たスキンヘッドのガタイの良い男がやって来ました。
見るからにヤバそうな雰囲気がプンプン漂っています。
やべえのがやって来たなあ。目を合わさんとこ。
と思っていると、スキンヘッドが僕のほうにやってきた。しかもニコニコ爽やかな笑顔。
怪しい、絶対になにか隠してる、危険信号マックス。
そしてスキンヘッドは僕に話しかけて来た。「こんちは〜〜♪」
さわやか過ぎる!
しばしスキンヘッドと話をして「もしかしたらこいつは良い奴じゃないか?」と思えるようになって来ました。
そしてスキンヘッドの秘密を話してくれました。
スキンヘッド野郎は、税理士さんでした。熊本から車を運転してやって来ました。
スキンヘッド野郎はボランティアに行くときに迷ったそうです。
熊本から宮城県まで1500kmはあります。あまりにも遠い。さすがに迷う。
その迷いを断ち切るために、彼は頭の毛を全部剃り上げました。スキンヘッドにしました。
そして、行くしかない! 彼は覚悟を決めたのです。かっこいい!と思いました。
その彼とは熊本でも再会し、阿蘇山の水害のボランティアも一緒に行いました。
約束を守るために舞い戻ってきた男
1ヶ月間、避難所の世話係のボランティアを行って来た男性がいます。
1ヶ月も避難所で地元の方達と過ごせば、仲良くもなるでしょう。
そしてボランティアを終えて帰宅する事に。
すると小学生の女の子が彼に「おじちゃん、また来てね!」
「ああ、また来るよ」と返す男性。
そして車を運転して男性は帰路につきました。北陸のとある地方都市まで。
車を走らせながら男性は考えました。
「おじちゃん、また来てね!」と言われて「ああ、また来るよ」と返事はしたけど、本気だったのか? たんなる社交辞令みたいなものだったのか?
実は、この男性は地元でいつくかの会社を経営し、市議会議員も務めている名士でした。忙しい身です。
「ああ、また来るよ」と簡単に来れる身ではありません。
しかし男性は決断しました。女の子との約束を果たすために。
地元に戻り、仕事などいろいろと段取りをつけて再び被災地に戻ってきました。
有言実行。彼の後ろ姿を見て仁義を守る男の姿を見た気がしました。
物よりも想い出を訴えた女性
仮設住宅で避難生活を余儀なくされた方達。
お話をさせていただく機会も多く、その日も幾人かの方達と話をしていました。
とりとめのない話が続き、ガレキの話になりました。
ガレキの処分は・・・
すると、一人の女性が涙ながらに訴えてきました。
「ガレキはゴミじゃないんです」
「思い出が詰まっているんです」
考えさせられる一言でした。
ビデオテープの清掃を依頼した初老の男性
ボランティアセンターには、被災者からの要望が寄せられます。
その日は津波でヘドロを被った、大量のビデオテープの水洗いでした。
今は懐かしい、VHSビデオテープが段ボール箱が何箱もあります。
ビデオカセットの奥の奥までヘドロは入り込んでいます。
「これってビデオ、もうダメなんじゃない?」そんな思いを誰もが感じながらも黙々と大量のビデオカセットを水洗いします。
そしてビデオテープの内容を知る事となりました。
エロビデオでした。
怒ったボランティアもいました。呆れてしまったボランティアもいました。
しかしそれは、その方にとって何かしらの想いが詰まっているのでしょう。
物の価値観は人それぞれ。そこに物語があると感じました。
4つの出来事をご紹介しました
どう感じるかは人それぞれ。
ただ、覚悟が定まった方は、背筋も伸びて人間力を感じます。